CYRIC百科

*中性子ハロー
*年代測定(熱ルミネッセンス法・フィッショントラック法)
*プリオン
*太陽風


中性子ハロー

 原子核は自然界で天然に水素からウランまで約300種存在します。しかし,今日では実験技術の発展により, 2000を越える原子核の存在が明らかになっています。この原子核の存在領域の拡大を通じて,原子核の非常に多様な姿を見ることができるようになりました。従来は既知とされていた原子核の性質に関する常識が覆され, 新しい現象も発見されています。そのうちの一つが中性子ハローです。原子核は陽子と中性子でできており,天然の軽い原子核はほぼ同じ数の陽子と中性子からなっています。ところが最近,人工的に中性子が陽子よりもたくさん存在する原子核をつくれるようになりました。こうしてつくられた原子核は天然に存在する原子核とは違った性質を示します。中性子が多くなりすぎて中性子が原子核からはみ出し,原子核のまわりを雲のようにまとわりつきます。「宇宙誕生から長年の間に亘って生成された元素が,このように中性子をたくさん吸った原子核を媒介にして作られていったかもしれない?」ミステリーはまだまだ続いています。


年代測定(熱ルミネッセンス法・フィッショントラック法)

 上高森などにおける旧石器時代の遺跡発掘捏造事件に関連して、年代測定法に注目 が集まっています。放射能に関連した年代測定法では親核種と娘核種の存在比を利用 した方法が一般的ですが、試料の化学形・年代によっては他の方法を用いる必要があ ります。それらの方法の中でよく知られているのが、熱ルミネッセンス法およびフィ ッショントラック法です。熱ルミネッセンス法は石英・長石などの鉱物を加熱すると 微弱な光を発する現象を利用した測定法です。これらの鉱物が土壌中に存在する間、 周囲から放射線を受け、その量に比例して電子が構成原子から放出され格子欠陥など に捕獲されます。この鉱物を加熱すると捕獲電子は解放され、蛍光が発生します。蛍 光の強度は鉱物が吸収した自然放射線量に比例するので、古いものほど強く発光しま す。一方,フィッショントラック法は鉱物中の 238Uの量と自発核分裂の飛跡の数から 年代を決定する方法です。 238Uの自発核分裂は壊変のエネルギーが大きく、分裂片は 鉱物の中で10 -2mm程度走り、飛跡を残します。化学薬品で鉱物の表面を処理することで、飛跡を顕微鏡で計数できます。飛跡の数は鉱物中に含まれる 238Uの量およびこの鉱物が固化してからの経過年数に比例しています。鉱物中の 238Uの量を知るために は、一度試料を熱して元の飛跡を消した後、原子炉で試料に熱中性子を照射し、 235U の核分裂で生じた飛跡を計数します。235 Uと238Uの比は既知なので238 Uの量がわかります。これらは優れた測定法ですが、石器の場合、材料の鉱物を加工しただけなの で、それ自体の作られた時期はわからず、石器の埋まっていた地層の年代しかわかり ません。


プリオン

 人間や家畜の体内に存在するたんぱく質の一種です。正常のプリオンのアミノ酸のらせん造が原因不明の何らかの理由でβシート構造に変化したものを異常プリオンと呼び,これが様々な脳疾患を引き起こすと考えられています。異常プリオンは,主に脳,目,脊髄に蓄積し,正常なプリオンを次々に異常型に変えて雪ダルマ式に増殖して脳機能を障害します。異常プリオンが病原体となって脳をスポンジ状にするプリオン病には,狂牛病,羊のスクレイピー,人間の痴呆症の一種であるクロイツフェルト・ヤコブ病,アフリカ風土病のクルーなどがあります。主に脳・脊髄・神経を食べることによって感染しますが,感染に時間がかかり種の壁を超えないといわれていました。発症年齢が若い新型クロイツフェルト・ヤコブ病は,牛の異常プリオンが引き起こす狂牛病が,種を超えて100名以上の人間(主にヨーロッパ)に急速に感染して多くの社会問題を引き起こしています。これに関係してヨーロッパ長期滞在者は献血することができません。クロイツフェルト・ヤコブ病のPET研究も報告されています。


太陽風

 太陽コロナから惑星間空間に定常的に放射されるプラズマで,彗星の尾を太陽と反対方向にたなびかせるなど,太陽から吹き出す風のように振る舞うことからこのように呼ばれます。その主な成分は陽子と電子で,流速は300 〜 800 km/ s,粒子密度は5〜10個/ cm 3とされています。平均温度は105 K 程度と太陽フレア(太陽表面の黒点群を中心とした局所的な爆発)によって発生する太陽フレア粒子や,銀河からの粒子線(銀河宇宙線)に比べてエネルギーが低く,通常宇宙放射線の仲間には数えません。
 1958年パーカーによって理論的に予測され,1962年にマリーナ2号の直接観測によって確認されました。また,アポロが持ち帰った月の岩石の表面に太陽起源と考えられる粒子が観測されており,太陽風によって打ち込まれたものと考えられています。
 太陽風は,太陽大気最外層のコロナが100万K以上もの高温であるため,コロナガスの圧力によってプラズマが太陽の重力を振り切って流れ出したものと考えられます。太陽風の諸要素は一定ではなく約27日周期の太陽自転や太陽面での爆発などによって変化し,惑星磁気圏に擾乱(電離圏嵐)をもたらすことがあります。