930型,HM12型サイクロトロンの現状

サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター  藤田 正広,篠塚 勉

 2000年3月のファーストビーム加速に成功してから,早いもので1年半が経過しました。共同利用も再開されて,様々なユーザーにビームを提供できるようになりました。本稿では,この1年半の間に行なわれてきた開発の現状とこれから予定されている計画について報告します。
 930型サイクロトロンに更新されたことによる利点の一つとして,外部イオン源を利用することができるようになった点が挙げられます。これまでの旧680型サイクロトロンでは内部イオン源を使用していたため,生成できるイオンの種類には大きな制限がありました。930型ではその制限が無くなった為,イオン源の開発次第で様々なイオンビームを加速することが可能となっています。特に,最近のECR (電子サイクロトロン共鳴) 型イオン源の進歩によって,陽子・ヘリウムのような軽イオンからアルゴン・キセノンのような重イオンまで様々なイオンを生成することが可能となっています。本センターでもECR型イオン源の第一号機として,高性能永久磁石を使用したコンパクトなECR型イオン源を設計・製作しました。これまでのところ,この新イオン源から供給された炭素イオンなどの重イオンビームが,共同利用で利用されています。現在も,アルゴンの多価イオンの生成を目指した調整が続けられています。来年度以降はさらに大型のECR型イオン源を製作して,キセノンまでの重イオンの生成を目指したいと考えています。また,今年度後半からは負イオン源の調整・運転も始める予定です。この負イオン源から供給される,負水素イオンや負重水素イオンを利用して,本サイクロトロンの目玉でもある”負イオン加速”の試験を行なう予定です。また,イオン源から取り出されたイオンビームを,ロスすることなくサイクロトロンに入射するためのビームラインの調整も進んでいます。現状では,イオン源から引き出されたビームのうち約5 % がインフレクター電極を通過して,サイクロトロン内部で加速されるところまで調整が進みました。今後,入射ライン上にビームバンチャーと呼ばれる装置を設置することによってさらに輸送効率を上げる努力をしていく予定です。新サイクロトロンで計画されていたビームのタイムシェアリング化は振り替え電磁石用の交流電源の調整,入射系でのビームチョッパー増設作業も終了し,平成14年初頭からテスト実験を行います。順調に調整が進めば,同時に3つのコースでの実験が進められることになり,より効率的なビーム利用が可能になると期待されます。
 サイクロトロン本体に関しては,予想以上に順調に稼動しています。最大加速エネルギーは,陽子の場合で90 MeV,ヘリウムで110 MeV ですが,現状では陽子 70 MeV までの加速に成功しています。これ以上のエネルギーに加速する際には,加速電極や引出し電極での放電が大きな問題となるため,充分なエイジング(慣らし運転) が必要となります。現在は,このエイジング作業の最中ですが,近いうちに最大エネルギーでの加速試験を行なえるように調整を進めています。
 サイクロトロン本体・入射系・BT系などの制御系も,順調に稼動しています。当初の目的である,全ての機器においてPLCを利用した計算機制御を行なうという点は達成されました。今後は扱い易さを念頭に入れた改良を行なっていく予定です。現状では,マウス・キーボードを使用しているため,マルチパラメーターを同時に制御することができません。ビーム輸送の際などには,いくつかのマグネットの電流値を同時に制御できた方が調整しやすいため,この目的に合った多点入力デバイスの開発を進めています。
 このように,イオン源・入射系・サイクロトロン本体・制御系において,各々順調に作業が進んでいます。今後,負イオン加速や最大エネルギーでの加速試験など様々な調整・試験が行なわれていく予定です。

 RI製造専用として利用されているHM12型サイクロトロンも順調に稼動しております。イオン源の改造,RF系の真空管交換,制御系の改良など,日常業務の間を縫った改良も行われ,安定した運転が行われています。