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巻頭言  

共同利用化の推進による最先端設備の確保

東北大学理学部長 田 中 正 之

・研究紹介

陽電子放出核種標識生理活性有機化合物の合成

東北大学加齢医学研究所 多 田 雅 夫  

原子核独楽を眺める

青森大学工学部 川 村 暢 明

・学内RI施設だより(東北大学遺伝子実験施設 鈴 木 裕 行)
・共同利用の状況
・平成8年度概算要求について(CYRIC 織 原 彦之丞 )
・センターからのお知らせ
・研究交流
・RI管理メモ
・組織図
・委員会名簿
・人事異動
・職員名簿
・学生・研究生名簿
・新旧電話番号対照表
・CYRIC百科
・編集後記


巻 頭 言  


共同利用化の推進による最先端設備の確保  

東北大学理学部長 田 中 正 之


 大学にあって理系の教育研究に携っている人達の直面している問題の一つは研究費の逼迫であろうとりわけ実験や観測を主たる研究手段としている人達にとってはその研究に必要な最新の実験・観測機器を購入・試作しまたは維持するに要する経費の調達が大きな悩みの種である期待できる財源は普通は文部省の科学研究費補助金や国際共同特別事業費などで教官当積算校費や施設経費設備維持費などの経常的経費は既設設備の維持費の一部を賄うのがやっとで新しい研究の展開のための財源としては殆ど期待できないというのが実情である 近年大学院最先端設備費高度化推進特別経費研究基盤重点設備費等々の名目で新規の予算が計上され状況は改善されつつあるもののいずれもまだ予算総枠が小さく要求が認められて採択されるチャンスはきわめて乏しい科研費については幸いにして他の政府予算に比べれば別格といってもよい高い伸び率を示しているが1000億円弱の総額に対して6万件を越える申請がある状況から容易に予想されるように採択率は決して高くはないまた科研費の交付額の上限には特別推進研究や創成的基礎研究 (新プログラム) などの一部の費目を除けば一般に大きな制約があってこれによって実験・観測機器を調達・整備することは望めない (科研費の目的そのものがタ績と条件の整った研究者 (グループ) の研究を飛躍的に推進させるための支援にあり研究環境の整備充実にはないことはよく知られている通りである)  ところで単価がおよそ10億円を越えるようないわゆる大型研究設備については学内または全国共同利用センター等を設けて整備するものであることはいまや常識となっているこの方向が基本的に正鵠を射たものであることは多くの共同利用センターの挙げている実績からも明らかである東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターも增Xの問題や困難を抱えつつ関係者の不断のご努力によって学内外の共同利用を通して本学の教育研究上特筆に値するきわめて大きな成果を挙げていたことは間違いないこのような大型研究設備の整備充実についてはたとえば本センターの当面の概算要求や将来構想を学内外の支援の下にねばり強く推進していくということで少くともその方向性は明確である問題は単価が数千万円から数億円のいわゆる中型の実験・観測機器の整備であるこれらについては研究室単位で多種多様な要求が出されているが既に述べたようにその調達・整備はきわめて困難な状況にある大学の研究設備が民間企業や国の試験研究機関のそれに比べて著しく見劣りするということが指摘されて久しいが確かにこの状況が続けば社会の牽引車としての大学の立場は危ういと言わなければならな い このような状況を打開する一つの方策としては従来は研究室単位で整備してきた中型研究設備を共同利用設備として整理統合し集中的かつ効率的な投資によって国際的にも第一級の設備として確保していくという方向しかないように思われるこのような中型研究設備の一つの例として赤外分光光度計を取り上げてみよう筆者の研究室には大小合わせて5台の赤外分光光度計があり購入当時の平均単価は1台約2000万円である大分以前の調査であるが東北大学全体としては約150台の赤外分光光度計があり平均単価は筆者の研究室のものと大同小異であるから購入総額は約30億円と見積られるこれら150台の赤外分光光度計がフルに稼動しているかというと決してそうではなく多くは役割を終えて実験室の隅で埃をかぶっている少し長期の視点に立てば国際的にも類を見ないような数台の最新鋭の赤外分光光度計を整備して共同利用に供することにより従来よりはるかに経済的に第一級の赤外分光実験を行い得ることは明らかである核磁気共鳴装置ソ量分析装置レーザー分析装置などについても事情は類似していよう汎用性の高い研究設備についてはみなこの考え方でいくのであるこのような考え方を推し進めるこ とにより共同利用実験・観測機器の維持管理や運転を担当する人的資源の捻出も可能になるだろう何よりも教官が研究費の申請等の雑務から開放され本来の独創的な研究に没頭できるのではないだろうかいずれにせよ大学が生き残っていくために無いものねだりをするのではなくさまざまなアイディアを出し合って真剣に自己変革を試みる時が来たと思う次第である