目       次

巻頭言

東北大学農学部名誉教授 木 村 修 一

・研究紹介    

CYRIC 放射線管理研究部  中 村 尚 司    

医学部附属病院老人科    佐々木 英 忠

・学内RI施設だより (理学部原子核理学研究施設 大 槻   勤 )
・新しい機器の紹介
真空装置 クリオスタット HM500
全自動血球計数器
データ収集・解析システム
・サイクロトロンの現状と改造計画 (CYRIC 篠 塚   勉)
・共同利用の状況
・補正予算について (CYRIC 織 原 彦之丞)
・センターからのお知らせ
・研究交流
・RI管理メモ
・組織図
・委員会名簿
・人事異動
・職員名簿
・学生・研究生名簿
・CYRIC百科
・編集後記


巻 頭 言


東北大学サイクロトロン・RIセンターに期待する

東北大学名誉教授、昭和女子大学大学院教授 木 村 修 一


 東北大学を退官してすでに1年を過ぎ、新しい環境にもどうやら馴染んで来たこの頃ですが、実験室の設備やスタッフなどは全くのゼロ状態で、覚悟をしていたとはいえ、研究条件の面ではいささか寂しい思いをしているところです。外からみると、やはり東北大学というのは研究のやりよい環境にあったことを感ずるとともに、いまさらながらサイクロトロン・RIセンターは魅力的な研究環境だったことを痛切に思いだすのです。 さて、退官しているのに、このように駄文を投稿しなければならないはめになったのは、3年程前からこの原稿を書くことを引受けていたという経緯があったからです。「退官前には是非とも」と何度となく催促され、その都度「何とか間に合うようにします」という答えを繰り返して結局書けなかったのですから、全くお恥ずかしい限りです。当時、教養部の廃止を含む東北大学の改組のまっ只中にあって、会議に明け暮れる立場にあったことも事実ですが、ともかくこのように遅れてしまったことをお詫び申しあげます。以上のようなわけですので、現役中に書こうと考えていたことと少しずれてくることをお許し願います。 私がRIを使い始めたのは昭和31年頃、大学院 の学生時代でしたが、当時の施設はまことに貧弱で、雨風が入り込むような状況でした。その後も、トレーサーにRIを使用するこの委員長時代に、運悪く(主観的にです)施設の不備と危険性を指摘され、「使用停止処分」を受けてしまったのでした。科学技術庁に何回も足を運び、再開するための手続きをとるのにずいぶんエネルギーを費やしたことを覚えています。さらに現在建っている農学部のRI施設を作るのにも、大変苦労したことを覚えています。このようなことをやっていたことから、東北大学原子理工委員会関連の委員などを長らく務めることになり、その延長の上にサイクロトロン・RIセンターの運営委員(安全管理委員会委員など)をひきうけざるをえなかったというのが偽らざる事情でした。どちらかといえば管理・運営の仕事が多かったといえます。 ところが、チタンニウムの生体内動態についての研究を始めることになり、私がサイクロトロン・RIセンターの使用者の立場になったのが10数年前でした。使用者の立場が入ると、いろいろと見方が変わるものですが、やはり、変わったのは「サイクロトロン・RIセンターをいろいろな面で、もっとよくしたい」という気持ちがより強くな ったことは事実です。 私は、学生時代からそうでしたが、自分の属している研究室や学部に必ずしも設備が揃っていないことが多かったので、ずいぶん他の研究室や他の学部・研究所にお願いにあがり、教えを請い、施設や道具を使わせていただくことが多かったと思っています。大学院生のとき、超遠心機を借りるために石田名香雄前学長のところにお願いにいったのが縁で、先生の門下生に入れていただいたのもそうでした。また甲状腺癌の診断をお願いしたことから、その後も癌についての手ほどきをいただき、いまでもときどきその領域の研究で教えていただいている佐藤春郎前抗酸菌病研究所長とのであいもそうでした。もちろん東北大学以外のところにも教えを請いに伺ったことが何度もあります。大学院の学生時代にニワトリの胚発生のことで森於兎先生を東邦大学医学部に訪ねたこともありました。大先生であることも知らずに教授室を訪ねていろいろと培養実験のこつなどまで教えていただいたことを覚えています。後で分かったのですが、森欧外先生のご子息で、本学名誉教授森富先生のお父上でして、自分の不躾さに冷汗をかいたしだいでした。私は、他の領域の先生からのご意見や教え ていただいたことが自分たちの研究に大きな幅をもたせるだけでなく、いろいろな角度からの見方を教えてくれるものとして、研究を推し進める上では、むしろ無くてはならないことではないかと思っています。一国一城の主になってしまわずに、絶えず武者修行をする姿こそが研究者としての資質を伸ばすのではないかと考えるのです。このような点で、サイクロトロン・RIセンターは研究者にとって、非常に刺激のある環境だと思っています。各学部・研究所から集まっているため、実にさまざまな領域の方がおります。 私にとっては、その点非常に魅力的なものでした。しかし、おそらくはサイクロトロン・RIセンターに籍をもっている先生方にとっては、また別の悩みがあるのではないかと推測いたします。外部から来られる先生方は無責任で困る、と思われることが多いのではないかと思います。伝統的に共同で使うことの不得手な日本人の習性がでてくるに違いないからです。しかしこれは、なんとしても諦めずに矯正する必要があります。ルールを徹底させることは断じてやるべきです。 そして最新鋭の設備、機器類の整った(もちろんまだまだ足りないということはあるでしょうが)有利さを 充分に活かして、他の領域の先生方の研究上のエッセンスを吸い取り、これらをこやしにして共同研究の成果を挙げてほしいと思います。東北大学は比較的門戸解放型といわれますが、それがたんに形だけではなく、それによってもたらされる実、例えばおたがいにいいところを重ね合わせることのできる、あるいは他の領域からの新しい視点をとりいれるといった実をみのらせることが大切だろうと思います。一人の天才的な学者の個人的歴史をよくみると、やはり、その先生や育った大学などの環境がその人を育てたことを知らされることが多いものです。 東北大学のサイクロトロン・RIセンターから素晴らしい成果のあることを心から期待してます。