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巻頭言

東北大学総長 西 澤 潤 一

・研究紹介

加齢医学研究所 機能画像医学研究分野 福 田   寛

・学内RI施設だより (加齢医学研究所 佐 藤 和 則 )
・ サイクロトロン多目的利用15年のまとめについて (CYRIC 織 原 彦之丞 )
・共同利用の状況
・センターからのお知らせ
・研究交流
・RI管理メモ
・組織図
・委員会名簿
・人事異動
・職員名簿
・学生
・研究生名簿
・CYRIC百科
・編集後記


巻 頭 言  

東北大学総長 西 澤 潤 一


 研究が出来る人間程仕合わせな人種はないと昔からよく聞かされた。趣味と職業の一致とも云える。しかし、いま思い出してみると、蓄電池のガラス槽の間につめてあるパラフィンを抜き出して絶縁に使ったり、チョークコイルをほどいてコアを組み合わせて変圧器に使ったり、と云った正に肉体労働、それも相当強烈な肉体労働たった。 しかし、このような苛酷な肉体労働を敢えてしても、進んで研究に専念したのは、到達すべき実験に大きな夢を持っていたからに他ならない。木村一治研のシンクロトロンの建設現場の雑然とした中に通っていたピンと張りつめたものを、つい昨日の事如くに思い出す。 或る面から見れば、研究費が足りないが故の苦し紛れと思えるだろう。しかし、斯うして鍛えられて、加速器用の電磁石が正しく設計出来るようになり、次の新しい加速器などの設計に立派な基礎を提供し、進んだ実験を行うのに大きな効果があったと思う。 非水研(現反応研)羽里研究室でNMRの自作を行っていたが、殆ど出来上がった頃、バリアン社からの輸入予算がついた。全く無駄だったように考えられると思うが、大変な辛酸をなめた試作の体験は、充分に生きて、バリアン社の機器は 高い性能を発揮したばかりでなく、付加装置を自作して、標準器では測定出来ない、いろいろの特性の測定も可能にしたと聞いている。 設計とは、矢張、野蛮とも云える実験の体験があって初めて可能になるものであり、特に未開の分野に対蹠しようというときには、充分な実験体験がなくては出来るものではない。今後、増々新しい分野に率先して入ってゆくことを要求されるようになることは必然の流れで、そのためには実は終戦後、徒手空挙とも云える状態で、シンクロトロンの自作に挑戦したあの燃え上がるような熱気に溢れた木村研の雰囲気を再現することが必要なのだと思う。購入した美麗な機器を並べつなぐだけで出来るような測定に留まるような小賢しい雰囲気は東北大学にはなかったような気がする。機器を買って貰うだけで出来るような研究なら誰にでも出来る。またそんなことをやろうとしても、大抵は中央の研究機関の人達が既に手をつけていて、東北大学がノソノソ出掛けて行ったって時期既に遅しである。しかも、それは日本初演であっても、国際的には二番煎じなのである。 最近になって、実験用機器が進歩したために、自分で工夫しようという気持ちが薄くなってしまったよ うな気がする。然し、考えて見ると、どんな実験でも最初は甚だ本質を捉えた簡単なものであって、その後の実験は次第次第に精度を挙げてゆく結果、高度の特性を持つように企業が改良を重ねて行ったものであろう。動的なラング法を世界で最初にやられたのは千葉純一先生で、今、簡単に高い精度で実験観察が可能だが、その開祖となった千葉教授の業績こそ大学人の目標とすべきものだと思う昨今である。